窮屈なのが苦手で、
ジーパンというものはあまり履かない。
それで一本だけ持っていた。
一本あれば、充分。
ちょっと危ないところに登ったら、
苔で滑って落ちた。
たぶん、その時やったんだと思う。
ほどなく、穴が開いているのを発見した。
それからも何回か履いた。
穴が開いているなと心の中で思いつつ、
履いて、出かけたりもした。
何しろ、一本しかないのであって、
代わりは持たないのであって、
特別なアングルから、
努力して見ようとしない限り、
見えない場所の隠れた穴だから、履いていい事にした。
内心、このままではいけないとは思っている。
おそらく、新しいのを買うだろう。私。
なんとかならないかとも考えてみた。
穴をどのようにかして繕うのもいいし、
リメイクしてもいいだろうし、
捨てないで済む方法はいくらでもあると思う。
ただ、何もしないだろう。私。
そもそも、このジーパンがあまり好きではない。
買った時から、
失敗したと思い続けてきた。
それなりに人に褒めてもらったりもしたが、
納得したことなど一度もない。
バラの刺繍をかわいいと思った事もない。
自分のスタイルに合っているとも思わない。
一本しか持たないのであって、
代わりはないのであって、
半分は仕方なく履いてきた。
好きになったことなど一度もないし、
違和感を感じ続けてはきた。
一方で、「お尻を包んでくれてありがとう」という、
当たり前の感謝はあったし、
満足に履けないわけでもなく、
ジーパン本来の仕事はしっかりとこなしてくれていたので、
くされ縁というか…。
ジーパンが倒れるのが先か私が倒れるのが先か、
こうなったらとことんつきあってもらおう、と。
その腹を決めた一本がついに破れたのであって、
もういいかな、と思うに至った。
おそらく3、4年の付き合いだったと思う。
捨てるかもしれないし、
何かに作り替えるかもしれないし、
まだ決めていないけれど、
なんとなく思ってその前に、
破れたジーパンを裏返しにして履いてみた。
見えないところでは、
意外と"気の効くやつだったなぁ"と思った。
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by hayatokaori
| 2012-04-03 23:00